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世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし


 平安のプレイボーイ在原業平が歌ったように、日差しが春めいてくると桜の事が気になりそわそわした気分になるのは、今も昔も変わらないようです。今年、私にはいつもより桜の開花を待ちわびる理由があります。

 それは、一本の桜の若木のオーナーになったからです。

 湊山公園に樹木のオーナー制度がある事を、数年前から市報で知っていたのですが、一昨年は申し込みの期間が過ぎていて、昨年は既に定員いっぱいでした。3年越しにやっと念願が叶ったわけです。


 私の木が昨年末に植樹されたと市から連絡がありましたが、場所を聞きそびれてしまいました。どこにあるのか気になって公園に散策に行きました。1時間以上歩き回って、やっとのことで自分の名前のプレートをつけた桜の木を見つけました。片手で握れるほどの幹の若木でした。「やっと会えたね、これからもよろしく」という気持ちになりました。


 2月の大雪のときは、心配で見に行ってみると案の定、針金のような細い枝が2本折れていてしょんぼりしたものです。でも先日、春を思わせる暖かい日、様子を見に行くと小さなつぼみが膨らんでいました。見事な枝振りにたくさんつぼみをつけたの周囲の先輩桜には及びませんが、きっとかわいい花を咲かせてくれることでしょう。

 これから10年先、20年先、この桜と一緒に春を待つのが楽しみです。

院長 片山郁子

 

かたやま心の健康クリニック


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